結論から言うと「伝え方が1割、信頼関係が9割」です
伝える、言葉にする、という事を私なりの解釈をキックボクシング選手時代の試合経験から紐解きます
選手は試合で必ずセコンドというリング横でサポートしてくれる人を付けます
インターバル(1分の休憩時)にコーナーで椅子を出したり、水を飲ませたりする人です。
セコンドはインターバル時や試合中に口頭で、指示やアドバイスをしてくれます
この指示の伝え方がセコンドの腕の試しどころ、
セコンド技術が問われます
リングの上では鍛え抜かれた屈強な男が、対戦相手を本気で全力で倒しにいくのだからお互いの精神は極限状態です
そこで追い込まれたり、倒れてしまいそうな強打をもらった時はパニックになることも
そこでセコンドの指示が重要になります、この極限状態でどんな行動を取るのか、倒されるかもしれない状況で「セコンドの指示通りに動いて正解なのか?」そんなことが頭をよぎります
数分間の間で極限状態の相手に対してセコンドは的確に伝えなければならない、つまりセコンドは究極のプレゼンテーションなんです
そんな状況で、
【ダメなセコンドの指示】
ガード下げるな
うしろに下がるな
止まるな
何やってんだ
自分からいけ
気持ちだ
とにかく手を出せ
負けるな
それやっちゃダメだろ
これらは「〜するな」と否定的な表現で、内容も抽象的でどう行動するべきか的確な指示をしていない
この指示を聞いてる選手は行動を否定されることでマインドは落ちてしまう、そして的確な指示がないから「何をしたら良いのか」が分からない
悲しいですがこの類のセコンドが実に多いんです
ダメなセコンドは怒って気持ちを伝えてあげれば選手は気合いが入り勝ってくれる、と思っている
これは自己中な根性論の世界
現実はそんな単純で簡単ではない
【良いセコンドの指示】
ガードを上げればパンチもらわないよ
下がるより回ると距離保てるよ
ジャブをもっと出してリズムを掴もうか
相手がキックする時ガード下がるから右パンチ当たるぞ
肩が力んでるからリラックスしようか
これらは動きを否定することなく具体的に何をしたらよいかの指示をしている、そしてその利益も述べている
【素晴らしいセコンドの指示】
それいいね!その次どうするんだっけ?
その時はどうするんだっけ?
そのパターンがきたよ
それ練習したやつだから次分かるね
これは一見すると?な内容ですよね
でもね、選手からすると言われた通りに動くより、自分の考えで動いた方が格段によいパフォーマンスなんです
実はセコンドの指示通りに動いているんだけど、本人は自分で考えて動いているから実に良い動きができています
この動きは自分で考えた要素があるので成功体験として次に繋がり、建設的な指示になります
しかし、これには落とし穴があります
ただ真似しても上手くはいきません
このやり方には選手とセコンドの間に確固たる信頼関係が必要なんです
セコンドに対して全幅の信頼を置いていて、長い時間かけて一緒に練習見ている、この人の指示なら全て信じられる
という状況でないと効果がありません
そんな鳥肌のたつセコンドワークと試合を幾度となく目の前で見てきました
ビジネスの世界においても同じです
上司が部下に
「何だこの資料は?作り直してこい」
「あんな商談やってたら絶対に決まらないな」
と卑下するのみで具体的なアドバイスはしない
あとは自分で考えて強くなれ!俺はそれでやってきたんだ!的な昭和のオヤジ思考はありがちなパターンです
時代も人も変化しています
反対に、デキル上司は「あの○○は良かった、でもねあのタイミングを変えたらもっと良くなるよ」など褒めるとこは褒めた後に、具体的な指示をしてあげる
聞く側は一旦受け入れてもらえたので、相手の意見も受け入れる姿勢になります
しかし、これにも信頼関係が必要となります
例えば不注意でミスをしてしまったとき、
普段自分の事を何も見てない、自分に興味もない、声もかけてこない上司に怒られても「あんた俺のことも、現場のこと何も知らないだろ」イラっとくるだけ
逆にいつも面倒見てくれて、自分のことを理解してくれ信頼してる上司に「どうした?お前らしくないな」と怒られたら思いっきり凹むし、反省して次はミスをしないと誓うはずです
逆に褒められた時も同じ、前者の上司に良いときだけ褒められても、それまでの努力を見てくれてないからそんな嬉しくない「俺のしてきたことの何を知ってるんだ」と
後者の上司なら努力を認めた上で褒めてくれたと、努力していたことを認められた承認感もありとても嬉しい
つまりは伝え方も大事だけど、それよりも大事なのは信頼関係なんです
信頼関係が出来た上で、上手い伝え方をすれば間違いなく相手に伝わり行動に変えてくれます
よくダメな上司が口にする、やれと言ったことをやっていない部下に対して「なんでやっておかないんだ、やれと言っただろ!」
それは上司の伝え方が悪いだけなんです
伝わってないんです
信頼関係もできてないんです
言ったのに、約束したのに相手がやらないのは伝え方が下手なだけなんです
相手ではなく自分の問題
人は皆、言えば相手に伝わったと勘違いしています
でも言っただけでは殆ど伝わってないんです
自分の伝え方が悪いだけ
そのことを理解すると、伝え方も人間関係の作り方も変わってきますね
私の健康指導の事業でも大きく影響している部分です
健康指導は相手の生活習慣を変えさせないといけません
ただ伝えるでけでは行動は変わらない、ここで活きています
ダーウィンの進化論「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」
我々の世代ではまかり通った根性論や常識は通用しなくなっています
いつまでも昭和の頑固オヤジのままでいるのか、変化して生き残っていくのか
そして伝えることも大切ですが、「話を聞く」ということも大切な要素です
それはまた別の話で機会で
塾長 板倉直人