新型コロナにみる誤情報拡散のメカニズム

闘魂経営塾

闘魂経営塾メンバーの笠井です。
医療・ヘルスケア分野を専門に、企業や医療機関が発信する情報コンテンツの制作や、自社ウェブメディアを運営しています。

さて、TVなどのメディアでもネット上でも、新型コロナウイルスの話題一色といって過言ではない中で、最近「インフォデミック」という言葉を耳にした人もいると思います。

世界保健機関(WHO)は、ネットで真偽不明の情報やデマも含めて大量の情報が氾濫し、社会的同様が引き起こされる現象を「インフォデミック」と呼び、ウイルスの世界的大流行であるパンデミックと同様に、その危険性に警鐘を鳴らしました。

深く息を吸って、10秒我慢することができれば新型コロナには感染していない −LINEで拡散

コロナウィルスは熱に弱く、26-27℃のお湯を飲むと殺菌効果がある −SNSで複数投稿

ウイルスはアルコールでは消毒できないというのが通説 −ツイッターで拡散

ノーベル賞受賞者の本庶教授が「武漢の研究所で4年間働いた」「(このウイルスは)中国が作ったもの」などと発言 −フェイスブック(英文)などで拡散

ファクトチェックイニシアチブより https://fij.info


こうした情報をネット上で目にしたり、SNSで知人から転送されてきた経験がある人もいると思いますが、すべて根拠がなかったり、誤りであると確認された情報です。

「開発中のウイルス兵器が研究所から漏れ出した」といった、感染症の流行時にお決まりのように出てくるゲームの設定みたいな話もありますね。信じるか信じないかはあなた次第、です 笑。

そもそも、僕がフェイクニュースっていう言葉を初めて聞いたときに思ったことは、「なにそれ?カッコよく言っているけどようは嘘やん。悪いやつが嘘ついているってことやん」でした。

実際、フェイクニュースとは偽情報(disinformation)のことで、人を欺くため、あるいは注目を集めること(愉快犯)を目的に作られた情報を指します。

しかし、日経新聞にこんな記事が掲載されました。

情報パンデミック(1) 善意の投稿、人類翻弄 コロナの情報拡散力、SARSの68倍

2020/4/6付日本経済新聞 朝刊


フェイクニュースが広がる背景には、悪意ではなくむしろ人々の善意があるということです。良かれと思って行った情報シェアが、インフォデミックのもとになっているのです。

こうした善意で拡散される情報には、明らかな偽情報以外に、正しい情報が一部切り取られたり、誤解されたり、情報が古くなったために「正しくなくなった」ものも含まれます。

例えば、一般社団法人がん患者団体連合会は、新型コロナウイルスに対するがん患者さんのリスクや正しい対応方法などについて専門家の医師が回答する「新型コロナウイルス感染症に関するオンライン緊急セミナー」を4月20日に開催し、その動画を5月7日までの期間限定で公開していますが、期間限定での公開とするのは、「新型コロナウイルス感染症に関する状況が日々変化しており、古い情報がそのまま公開されることを避けるため」としています。

つまり、公開時点では専門の医師による正しい情報であっても、時間が経てば必ずしも正しい情報ではなくなることを理解しての措置をとっているのです。

だれでもが極めて簡単に、広く情報発信できる世の中になった今、それぞれの人が持つ善意の気持ちはそのままに、「情報発信者としてのリテラシー」と、その情報が発信されたのち誰にどのような影響を与えるかという「想像力」を身につけることが求められています。