行動心理学“ナッジ”を使って、ソーシャルグッドなアイディアを!

闘魂経営塾

「健康経営」に取り組む企業を運動、食事、情報で支援するサービス『うぇる・なす』の笠井です。

突然ですが「ナッジ(nudge)」って言葉、聞いたことありますか?

辞書的な意味としては「(注意をひくために)ヒジで軽く小突く」だそうです。
転じて、強制やお金ではなく、自発的または無意識に特定の行動を起こさせるような仕掛けや手法のことをいいます。

こうしたナッジの手法は、マーケティングはもとより、最近では社会課題の解決するために応用されています。

例えば、ある地域で交通事故が多発している道路があったそうです。そこは、片側一車線で道幅が狭く、両側には建物が密集していて見通しも悪いにも関わらず、スピードを出しすぎる車が多いことが事故につながっていました。
なかなか有効な対策がない中で、ある意外なナッジ的手法を取り入れたところ、事故が激減したそうです。

それは、「センターラインを無くす」です。
センターラインが無くなったことでドライバーは対向車への心理的な警戒が高まり、スピードを出す車が減ったのだそうです。

もうひとつ別の事例を。

日本ではがんの検診受診率がなかなか上がらないために、がんの罹患率(がんになる人)も死亡率も、ともに右肩上がりで増え続けています(がん検診受診率が高い国では、既にがん死亡数は減少に転じています)。

これまでも、自治体などはがん検診の受診を促す通知を送るなどして受診率を上げようとしていますが、なかなか効果が上がっていません。

ところが、このナッジの手法を利用して、受診率を高めた自治体があります。

そのひとつ、八王子市では、大腸がん検診の受診率を高めるために対象者に検査キットを送っていたそうですが、受診率はなかなか高まらなかったそうです。そこで、ナッジのある手法を使ってお知らせの文言を少し変えたところ、受診率を大きく上げることに成功しました。

検査キット送付時のメッセージ

以前「今年度大腸がん検診を受診された方には、次年度も検査キットをお送りします」

変更後「今年度、大腸がん検診を受診されないと、来年度からは検査キットをお送りできません」

これは、「得を求めるよりも損を避けたい」という人間の心理(損失回避)を利用して成功した事例です。

このようにナッジはうまく利用すれば、インセンティブなどでは解決できなかった課題を解決する有用な手法になります。

近年、僕の専門分野であるヘルスケア分野でも「情報がありすぎて欲しいものを見つけられない、もしくは選択できない」という状態に陥っています。

今はネットやSNSで誰でもカンタンに情報にアクセスできますが、それとは逆に欲しい情報にたどり着きにくくなっていますし、信頼性が乏しいものや嘘の情報(フェイクニュース)もあるのでやっかいです。

情報や選択肢が過度に多いと、人間は情報を得ることや選択することを回避したり、自分の経験則や、自分が信じたい人の情報(正しいかどうかは関係ない)に基づいて選択したりしやすくなると言われています。

こうした場合には、選択肢を絞って提示する「選択肢の簡素化」や、具体的な行動を示して直感的に理解しやすくすることも、ナッジのひとつです。
新型コロナウイルス感染防止策として、「2mの間隔を開けましょう」というだけでなく、レジ待ちの床に2m間隔で目印をつけるなどがそれにあたります。

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